ピカチュウ、フォルタレーザでの最後の試合
コパ・ド・ブラジルRound of 16のカードのひとつは清水エスパルス加入濃厚と報じられていたピカチュウ擁するフォルタレーザと、清水エスパルスに所属のヴァウドの古巣セアラーの対決だった。
同じ街のライバル同士の激突のクラシコとなった第一戦1stレグはピカチュウの2ゴールでフォルタレーザが2-0で勝利した。
<<フォルタレーザ2-0セアラー ハイライト動画>>
そして迎えた第二戦2nd レグ。
この試合がピカチュウがフォルタレーザのユニフォームを着て戦う最後の試合と報道されていた。
そんな一戦にピカチュウはキャプテンとしてフル出場した。
勝つしかないセアラーが押しまくる(特に後半は、攻めるセアラー、しのぐフォルタレーザという展開だった)時間が長かったが、フォルタレーザは失点を1に抑え、次のラウンドへと勝ち抜いた。
<<セアラー1 – 0フォルタレーザ ハイライト>>
そして試合後のインタビューでピカチュウはこれが自らのフォルタレーザでの最後の試合であることを認めた。
そして試合後、ピカチュウは、フォルタレーザのユニフォームを着ての最後の瞬間を噛み締めた。
ピカチュウ記者会見
その後ピカチュウは、フォルタレーザ会長同席のもと、フォルタレーザ退団と日本のクラブへの移籍を発表する記者会見を行った。
<<ピカチュウ退団会見動画>>
以下ではその会見のおおよその内容を紹介する。
(言葉を一言一言直訳するのでなく、要約意訳なども加えつつ、大体の内容を紹介する)
会長:
まず最初に、コパ・ド・ブラジルのRound of 16を勝ち抜けたことはとても良かった。
2年連続のベスト8だ(2021年はベスト4)。
クラブの歴史、そしてクラブの全てにとってとても意味のあることだ。
さらにセアラーとのクラシコを制して突破できたことはとても重要なことだろう。
そして、ここにいる素晴らしいプロ選手、素晴らしい人物であるヤーゴ(ピカチュウ)の退団について話さないといけない。
ピカチュウは2021年の初めに、バスコ・ダ・ガマという名門からフォルタレーザに加入した。
そして彼は、信じられないくらい驚異的な数字を残してくれた。
94試合出場で29ゴール、16アシスト、ブラジル東北地方選手権優勝、セアラー州選手権2年連続優勝、南米クラブNo1を決めるコパリベルタドーレス出場権獲得、2021年ブラジル全国リーグのベストのサイドバック。
(会長は会見で出場数96と話しているが、その後クラブのSNSなどでピカチュウのフォルタレーザでの出場試合は94とされていたため、上述訳では94試合出場とした)
ブラジル全てのクラブの中からベストのサイドバック認定されるなんて、東北地方のクラブの選手がこのような賞を受賞した例はないと思う。
更にはブラジル東北地方ベストのサイドバックにも選ばれ、優勝を決めるゴールも決めた。
彼は多くのことをチームに与えてくれた。
クラブに多くのものを与えてくれたピカチュウに、我々は感謝をしないといけない。
そして彼の退団にあっても我々は誠実でいたい。
ピカチュウがフォルタレーザに来た時から、我々は、海外でプレーするのが彼の夢であることを知っていた。そして、その時が来たと言うことだ。
彼は退団に際しても、ピカチュウは会長である私、選手、サポーター、クラブ全体にとても誠実に責任感を持って任務を全うした。今日の試合のロッカールームでの振る舞いも見事だった。
フォルタレーザが彼のような選手と仕事ができたことはとても素晴らしいことだ。
ピカチュウはこのクラブのプロジェクトにとって象徴的な存在だった。
そんな彼の夢を、我々は応援したい。
そしてまた、ここで私は、透明性を持って物事をオープンに話したい。ここで私が話すのは「数字」について、もっと言うと「彼の移籍に関する嘘偽りのない数字について」だ。
ピカチュウはフォルタレーザに移籍金ゼロで加入した。
そしてその時から、我々は彼が海外でプレーする希望を持っていることを知っていた。
そして今回ピカチュウは80万ドルの契約解除金をクラブに残しフォルタレーザを去ることになる。
巷では契約解除金は100万ドルで間違いがないという報道がされていて、その数字ならクラブにとってより良いが、実際には80万ドルだ(1ドル140円計算で約1億1200万円)。
しかし、我々にとって恵まれた条件でフォルタレーザにやってきたピカチュウは29ゴールと16アシストでチームに貢献してくれた。
このような背景だから、スポーツ的にも、そして、財政的にもクラブにとって、この移籍の話は良い話だ。
もちろん、契約解除金を受け取らず、ピカチュウがここに残ってくれる方が我々にとっては良いことだし、我々は彼の残留を望んだ。
しかし、最終的には彼の決断だ。海外でプレーしたいと言う彼の決断を尊重することにした。
ここでピカチュウに話してもらい、そして質疑応答をしてもらいたいと思う。
みなさん、こんばんは。
会長の言葉を嬉しく思います。ここに来た時から、海外でプレーしたいという希望を自分は話していました。
そして、その時が来たのだと思いました。
この機会を逃してはいけないと思いました。この決断を受け入れてくれた会長、クラブ関係者に感謝したいと思います。
ここで成し遂げたこと、ブラジル全国1部セリエAでベストのサイドバックに選ばれたことなどを嬉しく思います。
サッカーをはじめた小さい頃、ブラジル代表でプレーしたい、ヨーロッパのビッグクラブでプレーしたいという夢を描いていました。
年齢を重ね、夢の形は少し変わっていきましたが、ブラジルでプレーする選手の中でベストのサイドバックにも選ばれ、チームメイトたちもロッカールームなどでとても自分によくしてくれ、また自分を信頼してくれ、感謝しています。
自分はこれからもフォルタレーザを応援し続けます。そして、フォルタレーザがブラジルセリエBへの降格圏から上にあがることを願っています。
リベルタドーレス決勝トーナメントでの敗退後、色々なことが起こりました。
けれど、自分がフォルタレーザのサポーターはシーズン最終戦までチームを応援してくれ、最終的には幸せな形でシーズンを終えられると確信しています。
自分のプロ選手としての目標は、前進し続けることです。
そこにはより高いサラリーということも重要な意味を持ちます。もちろんお金だけが目的ではありませんが、プロとしてより高いレベルに行きたいと考え、プロキャリアを始めたパイサンドゥ、バスコ、そしてフォルタレーザでプレーを続け、そして今日最後の試合を迎えました。
今日の試合はセアラーとのクラシコであることに加え、コパ・ド・ブラジルという重要な大会で次のステージに進めるかどうかという重要な一戦でした。
ベスト8進出に向け、チームはできることをすべて行い、次のステージへ進むという目的を成し遂げることができました。
ピカチュウ:
あなたの言葉に感謝します。
サポーターからは多くの愛情、そして多くのサポートをいただきました。
一方、海外でプレーすることは私の希望であり、夢でした。
今回の自分の決断を、サポーターが理解してくれることを願います。
日本からのコンタクトに関し会長が回答:
会長:
日本から具体的な数字を伴ったオファーが届きました。
我々は正当な形で、ピカチュウには海外でプレーをしてもらいたかった。
日本のクラブは契約解除金を払うと申し出た。
我々はそれを受け、クラブ内部で話し合った。
ピカチュウには海外でプレーしたいという希望があった。
それらをすべて総合し、ピカチュウ本人とも話し合い、そして皆にとって平和的な形でこの結論に至った。
ピカチュウ:
サッカーの世界では全てが目まぐるしいほど速く動きます。
まず自分はリベルタドーレスでクラブの歴史を更新し続けることを考えました。
しかし、(リベルタドーレス決勝トーナメント、アルゼンチンのエストゥディアンテスとの第2戦で)残念な形で自分はレッドカードで退場を受けてしまった。
そのことでチームに迷惑をかけてしまった。
あの退場がなければ、(リベルタドーレスのエストゥディアンテス戦の)結果が変わったかもしれないし、変わらなかったかもしれない。
わからない。
けれど、あの退場の後、チームメートたちは自分を抱きしめ支えてくれた。
会長も自分に「我々は君と一緒にいる」とを励ましてくれた。
リベルタドーレスの後の週末のリーグ戦ではプレーできない選手もいた。アルゼンチンからブラジルに帰国し次の試合が迫っており、さらに数日後にはクラシコもあった。
会長とも話をし、チームを助けたいと思った。
そして幸いなことに、コパ・ド・ブラジルでは次のラウンドに進むことができた。
重要なのはこのユニフォームを着ている限りは全力でチームのために働くということです。
記者:ピカチュウ、まずはあなたの次のチームでの幸運を祈ります。そして、フォルタレーザについて話をさせてください。チームにピカチュウの代わりは存在しません。あなたが去ってしまった後、あなたの代わりとなりうる選手を挙げてもらうことはできますか?国内外を分析してもあなたの代わりになりうる選手を見つけることができないんです。そこであなたに教えて欲しいんです。
自分は最高の選手だから、代わりを見つけるのは難しいよね(笑)。
もちろん、冗談だよ。
こういうのは多くの要素が絡む。
選手の特徴、戦術、フォーメーション、ポジション・・・。
間違いなく自分より優れた選手は存在する。
自分はサイドバックの選手だと思っている。
攻撃的なサイドバック、相手のゴール前エリアに侵入するサイドバック。
中盤でプレーしたこともあるが、自分はサイドバックだと思う。
監督は別のフォーメーション、別の戦い方のオプションも用意し、それに合う選手は見つかると思う。そして何より、現在フォルタレーザに所属している選手たちは、どんな時でもチームを助ける資質がある選手たちだ。
記者:ピカチュウ、あなたはフォルタレーザのユニフォームを着て29ゴールを決めました。あなたが活躍できた要因の一つは(アルゼンチン人)監督のボイボーダの戦術・手腕があなたを活かした部分もあると思います。ボイボーダ監督に対して何かコメントはありますか?
ピカチュウ:
彼が自分を助けてくれたことを感謝している。
2021年のフォルタレーザ監督就任が彼にとって初めてのブラジルで、アルゼンチン人の彼は勝手が違う国で初めは苦労していた。ここでは試合数も多いしね。
しかし一緒に仕事をし続けることで、冗談を言い合えることもできるように関係性も深まっていった。苦労しながらも、チームが機能するフォーメーションを見つけ出し、3バックを敷いた上で、自分は中盤のサイドに開き、自分の特徴を活かして敵陣に侵入するということができた。
苦労しながらも監督はブラジルでうまく戦う術を見つけ、彼は自分のことをとても信頼してくれた。
たくさんあるよ。
サポーターがSNSなどで自分に応援のコメントをくれたこと。
みんなで協力してチームを作り上げていったこと。生きるか死ぬかという大会を戦い、多くのことを勝ち取ったこと。
今シーズンのフォルタレーザはブラジル全国セリエAで苦しんでいるが、そこから立ち直り、再び上昇していくことを願っている。
会長:
ピカチュウの代わりとなる選手に関し、話をさせて欲しい。
ピカチュウの代わりを見つけるのは本当に難しい。彼のように得点力もあるサイドバックというのはなかなか存在しないんだ。ブラジル にも、海外にもいない。
率直に言うと、ピカチュウの代わりとなる選手はいない。
しかし我々は、ピカチュウが去った後の戦い方を見つけて、それに適応していかないといけないし、そうするつもりだ。
クラブ全体で、ピカチュウが抜けてしまったことに対する解決法を、探していきたいと思っている。
ヤーゴ・ピカチュウは唯一無二の存在なんだ。
ピカチュウの退団会見YouTubeに対するコメントは・・・
この会見のYouTube動画に対し、書かれているコメントのほぼ全てがピカチュウに対する感謝、もしくはピカチュウの退団を悲しむ投稿で、ピカチュウに対する怒りや罵倒などネガティブなコメントが見当たらない。
本当に、ピカチュウはフォルタレーザで愛されていたのだなと思う。
そんな選手を清水エスパルスは迎えると思うと、サポーターの自分もなんだか身が引き締まる思いだ。
また、契約解除金(移籍金)が80万ドル(約1億1200万円)というのも驚きだ。
ピカチュウクラスの選手の契約解除金(移籍金)ならば、30歳という年齢があるとはいえ、100万ドルでも安いと感じられるくらい、もっと高く設定されてもおかしくないと個人的に考えていたが、それが80万ドルで済んだというのが個人的には驚きだ。
ピカチュウは近日中に来日するのだろうけれど、とはいえ、ブラジルから日本へ来た後の時差ぼけは相当つらいはずだ(自分の体験上、ブラジル から日本の時間帯に体が適応するのに1週間から10日は必要だ。特に、来日後2・3日目は一番つらく、昼ご飯過ぎの時間帯には凄まじい眠気が来ると思う)。
いつからピカチュウが出場できるか不明だが、清水エスパルスのユニフォームを着て右サイドでプレーするピカチュウを見るのが待ちきれない。
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