ペニャロールを翻弄したアトレティコ・ナシオナルに大勝した鹿島に衝撃を受けた

ウルグアイ

DAZN

2016年クラブW杯鹿島アントラーズ 3-0 アトレティコ・ナシオナルの衝撃

2016年のクラブワールドカップ。
鹿島アントラーズが決勝で欧州王者レアル・マドリードを焦らせたことが話題になった。

けれど、自分は、その一つ前の準決勝で、鹿島が南米王者のアトレティコ・ナシオナルに3-0で大勝したことに大きな衝撃を受けた。

2016年のアトレティコ・ナシオナルに勝つことがいかに価値あることか。

2016年のコパ・リベルタドーレスでアトレティコ・ナシオナルの強さをスタジアムで目の当たりにした自分は、鹿島がアトレティコ・ナシオナルを3-0で下すのを見ながら「あのアトレティコに大勝するとは!」と驚いた。

コパ・リベルタドーレスに取り憑かれた人たち

2016年3月16日。ウルグアイのエスタディオ・センテナリオに、コパ・リベルタドーレス・グループステージのペニャロール(ウルグアイ)vsアトレティコ・ナシオナル(コロンビア)の試合を観に行った。

ウルグアイの取引先の担当者で、病気や出張などでない限り全てのホームゲームに駆けつける熱心なペニャロール・サポーターのセルヒオ(仮名)が、サッカー好きの自分を観戦に誘ってくれたからだ。

スタジアムに到着した。

自分を誘ってくれたウルグアイ人セルヒオとは、以前も何度かセンテナリオに来たことがあった。自分がウルグアイに出張をした際、ペニャロールのホームゲームがある場合は、ほぼ毎回ペニャロールを観に行っていた。そういう時は、ゴール裏のコアサポーターが集まるトリブーナ・アムステルダムで観戦をすることが多かった。
(ただし、安全面から熱狂的なファンが集まるエリアからは離れた場所に座った)

セルヒオは、ゴール裏に陣取りつつも、応援歌を歌うとかでなく、試合の流れをじっくり眺め、ペニャロールがボールを外に開くべく場面などで立ち上がり、静かに「(外に)開け」と呟いたりしながら試合を観戦する50代の男性だった。

セルヒオ曰く「若い頃からペニャロールは好きだったけれど、そのころはスタジアムに毎回通うというようなタイプじゃなかった。けれど、歳を重ねることに、ペニャロールを見続けることが、なんというか自分にとってセラピーのような、自分と向き合う時間になっていったんだ。だから、ペニャロールの調子が良いときだけでなく、悪い時も、自分がモンテビデオにいる時は、必ずスタジアムに通いペニャロールを応援するのが習慣になったんだ」とのことだった。

そんな彼に連れられ、スタジアムに着いた。
だがその日、セルヒオは前のようにゴール裏には向かわなかった。
「今日はアムステルダム(ゴール裏)での観戦じゃないんですか?」自分は質問した。

すると、セルヒオは「前はゴール裏で見ていたけど、最近はジンクスを変えて、(バックスタンドの)トリブーナ・オリンピカで見ることにしているんだ」と言った。

ジンクスを気にするというのは、自分もなんとなくわかる気がした。

自分が清水エスパルスの試合を見に行けなかった時にエスパルスが勝つと、「自分がスタジアムに行かないとエスパルスは勝つ」と考え、自分が試合に行かない日は「俺がスタジアムに行かなかったから今日もエスパルスは勝つ」と考える。

けど、自分が試合に行かなくてもエスパルスが負けると、「自分がスタジアムに行けばエスパルスが勝つか」とか考えてスタジアム行きを考える。

また、自分がエスパルスのスポンサーのグリコ製品を食べた後エスパルスが勝つと、次の試合前もグリコのキャラメルやポッキーを買ったりしてしまう。

ジンクスが功を奏すこともある一方、なんの意味もないこともある。
結局のところは気休めなのだが、応援するチームのためにジンクスを気にするというのはわかる気がした。

バックスタンドから観客席を見渡すと、スタジアムには空いているスペースが結構あった。

ウルグアイはサッカー大国で、サッカーに熱い人は多い。
とはいえウルグアイは人口300万人強と人口が少ないこともあり、下記の記事でも言及した通り、スタジアムが満員になる試合は限られている。

この日の試合もスタジアムが満員とはならなかった。

とは言え、南米王者を決めるコパ・リベルタドーレスは国内リーグ戦よりも重要視される傾向が強く、ゴール裏トリブーナ・アムステルダムなどは熱心なサポーターが集結していた。

そして、両チームの選手が入場するとペニャロール・サポーターのゴール裏で発煙筒の火が上がり、コパ・リベルタドーレスの試合の定番で、多くのチームのサポーターに歌われるコパ・リベルタドーレス・エス・ミ・オブセシオン(コパ・リベルタドーレス優勝に自分は取り憑かれている)」の歌が聞こえてきた。

<ペニャロール版コパ・リベルタドーレス・エス・ミ・オブセシオン/この動画は自分が見たのとは別の試合のもの>

アルゼンチンの歌手フィト・パエスの名曲Y dale alegría a mi corazón(イ・ダレ・アレグリア・ア・ミ・コラソン)の替え歌で、コパ・リベルタドーレス優勝を狙う多くのチームのサポーターによって歌われる有名な応援歌だ。

歌詞の内容はチームによって異なってくるが、コパ・リベルタドーレス・エス・ミ・オブセシオン(コパリベルタドーレス優勝に取り憑かれている)の部分は共通で、各チームの特色を出した歌詞で韻を踏みながら応援歌が歌われる。

ペニャロール版の歌詞はこんな感じだ。

Y dale alegría, alegría a mi corazón
イ ダレ アレグリア アレグリア ア ミ コラソン
(俺の心に喜びを)

la Copa Libertadores es mi obsesión
ラ コパリベルタドーレス エス ミ オブセシオン
(コパリベルタドーレスに自分は取り憑かれているんだ)

tenés que dejar el alma y el corazón
テネス ケ デハール エル アルマ イ エル コラソン
(魂と心を全て捧げないといけない)

tenés que dejarlo todo por Peñarol.
テネス ケ デハール トド ポル ペニャロール
(ペニャロールのために全てを出し切らないといけない)

Y ya verás, la copa libertadores vamo’ a ganar,
イ ジャ ベラース ラ コパリベルタドレーレス バモ アガナール
(俺たちがリベルタドーレスを勝ち取るのを見ることになるだろう)

y ya verás, no somos como los p*t*s de nacional
イ ジャ ベラース ノ ソモス コモ ロス プ** デ ナシオナル
(俺たちはクソッタレの<ペニャロールの宿敵・ウルグアイの名門>ナシオナルとは別物だと目にするだろう)

ウルグアイの強豪ペニャロールを翻弄するアトレティコ・ナシオナル

2016年3月当時のペニャロールには、2021年現在イタリアのカリアリ所属のウルグアイ代表MFナイタン・ナンデスがいた。

アトレティコ・ナシオナルには現在リーベルプレート所属のアルゼンチン代表GKフランコ・アルマーニや、2021年現在V・ファーレン長崎所属(その前はサガン鳥栖所属)の元コロンビア代表ビクトル・イバルボらが所属していた。

試合開始。

最初の数分こそ勇敢な戦いを見せたホームのペニャロールだが、前半8分にアウェイのコロンビア・アトレティコ・ナシオナルのイバルボに先制を許すと、その後は試合終了までアトレティコ・ナシオナルに試合を支配され続けた。

ペニャロールが、前線からプレスをかける代わりに引いてブロックを敷き、構えて守備をしても、アトレティコナシオナルに守備網を崩される。

だからと言って、ペニャロールがアグレッシブにボールを奪いに行っても、アトレティコ・ナシオナルの選手たちは、ペニャロールのプレスをあざ笑うかのようにフェイントをかけたり、ボールを回したりして、プレスを剥がしまくってボールを保持し続ける。

その時のペニャロールは調子を落としていた時期だったとはいえ、ウルグアイの名門であることに変わりはない。そんなペニャロールが「手も足も出ない」という感じだった。

対戦カードだけ見ると、ウルグアイの名門vsコロンビアの名門という構図だったが、子供と大人の試合というくらい実力差が浮き彫りになった試合だった。

その様子を見て、まだグループステージの段階だったにも関わらず自分は「2016年のリベルタドーレスはアトレティコ・ナシオナルが優勝するだろう」と心の底から思った。

自分はそれまでにも南米で何度もスタジアムでサッカーを見たことがあった。
だが、ボンボネーラでボカを見ても、モヌメンタルでリーベルを見ても、マラカナンでフラメンゴやボタフォゴを見ても「このチームが今年のリベルタドーレス王者だろう」と確信を持つことはなかった。

南米王者を決めるリベルタドーレスは過酷だ。

サッカーの強さだけでは優勝するのに十分でなく、長距離の移動や、酸素が薄い高地での試合、アウェイ遠征で宿泊ホテルの外でホームのサポーターがアウェイチームの安眠を妨げるためホテル外で爆音の花火を打ち上げまくったりする。そういう、様々な逆境を乗り越える必要がある。

更に、運も含めた様々な要素が絡むゆえ、自分はそれまで確信を持ってリベルタドーレスの優勝国を挙げることなどできなかった。

けれど、2016年はアトレティコ・ナシオナルの優勝で間違いないと即座に思えた。

アトレティコ・ナシオナルは2016年のアメリカ大陸の最強のチームで、欧州王者相手でも良い勝負をするだろうと思った。それくらい、別格の強さをアトレティコ・ナシオナルから感じた。

一方、アウェイチームに格の違いを見せられているペニャロールを応援し、自分を試合観戦に招待してくれたセルヒオのことを思うと、悲しくなった。

そして、ウルグアイの強豪だというプライドを持ちながらホームスタジアムに集まったペニャロールサポーターの心中察して余りある、という心境になった。

だが、試合終了も近くなった時間帯。
ペニャロールは追加で失点をし勝ち目なしという雰囲気だったが、ペニャロールサポーターは応援のボルテージを一段階あげ、ペニャロールを奮い立たせようとした。

南米では応援するチームがあまりにも不甲斐ない戦いを見せると、サポーターがチームをボロクソに非難したり指笛を吹いたりするという印象を持つ人もいる。

けれど、実際のところは、たとえチームが負けていても、選手たちがファイティングポーズを崩していない場合、サポーターはネガティブな方向に走るのでなく、少しでもチームにパワーを注入しようと応援のトーンを強めることが多い。

特に、応援するチームが失点した際などは選手たちに対して「顔を上げろ」と言わんばかりの声量で応援歌がうたわれる。

ペニャロールのサポーターも、後半ペニャロールが失点を重ねた段階で「下を向くな」とばかりに応援のボルテージを上げた。

だが、そんな応援も虚しくペニャロールは0-4でアトレティコ・ナシオナルに敗れた。
スコアこそ4点差だが、実際にはもっと大差をつけてアトレティコ・ナシオナルが勝ってもおかしくなかった。

「残念な結果に終わってしまったね」と自分は、試合観戦に誘ってくれたセルヒオに言った。「けど、このアトレティコ・ナシオナルは強すぎる。多分、アメリカ大陸最強だし、コパ・リベルタドーレスも優勝するよ。もちろん、ペニャロールが挽回して優勝することがベストだろうけど、あのコロンビアのチームは、近年のリベルタドーレス優勝チームと比べても、格が違いすぎる」

セルヒオは落ち込みながらも自分の意見に同意した。「君の言うとおりだと思う。奴らは、強すぎる」

その翌日、取引先を訪問した自分は、この試合をテレビで見ていたという別のペニャロールファンと話をした。彼も「今年のアトレティコ・ナシオナルはアメリカ大陸最強だ」と言っていた。
また、ウルグアイのテレビ番組でも同様のコメントがされていた。

グループステージの段階で、2016年のアトレティコ・ナシオナルは別格だと思われていた。

そして、実際にコロンビアのアトレティコ・ナシオナルはリベルタドーレスを優勝し、南米最強チームとして日本開催のクラブカップ出場権を手にした。

鹿島アントラーズ3-0アトレティコ・ナシオナル

だが、2016年の年末に開催されたクラブワールドカップ準決勝で、アトレティコ・ナシオナルは鹿島に0-3で敗れた。

自分が南米の地で、その強さに圧倒され、脱帽したコロンビアのチームだったが、日本の鹿島に破れ去った。

アトレティコ・ナシオナルが、この大会から試験導入されたVARで鹿島にPKを与えられたことで動揺したのか、日本の寒さで体が動かなかったのか、決勝に勝ち上がることが予想されたレアル・マドリードのことしか頭になかったのかわからない。

また、そもそも、鹿島アントラーズが強かった、というのもあるだろう。
実際、2016年のJリーグ・チャンピオンシップで鹿島が見せた勝負強さは、エスパルスファンの自分も思わず感心してしまうほどだった。

何はともあれ、アトレティコ・ナシオナルの強さを南米で見ていた自分は、鹿島が、南米で段違いに強かったアトレティコ・ナシオナルを粉砕したことに衝撃を受けた。

そして、鹿島がアトレティコ・ナシオナルを下したことが、どれほどすごく、価値があるのかわかっている日本人がどれだけいるのだろうかと思った。

日本には、(日本のサッカーファンにはそこまで知られていない)コロンビアのチーム相手なら、日本のチームでも勝つ余地はあると考え、アトレティコ・ナシオナルに勝ったことの価値をわかっていない人も少なくなかったと思う。

多くの人は、鹿島はレアル・マドリードと善戦したから、すごいと感じていると思う。

けれど、南米で度肝を抜くほどの強さを誇った2016年のアトレティコ・ナシオナルを、日本のチームの鹿島アントラーズが倒したと言うのは、とても価値のあることだと、2016年当時の自分は衝撃を受けた。

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