2021年12月19日、朝起きてスマホでtwitterを眺めていたら、サッカー・ダイジェストの「ニホンはとても閉鎖的な国」清水前指揮官が驚かされた日本の”異質な文化”を語る!「とてつもないのが・・・」という、思わず刮目してしまう記事が出ていた。
そこで、実際にどんなことが書かれているのだろうと思い、調べてみた。
「閉鎖的」という表現を使うと日本人にとって重く、少し非難の意味が込められた言葉と響いてしまうと思う。
けれど、実際に、ネタ元のスペイン語記事を読んでみた個人的感想としては、ロティーナには日本を非難するという意図はなく、日本には外国人が入り込みづらい(日本人は相手を信頼したうえで人を受け入れる)という実情を淡々と述べたニュアンスと自分は推測している。
2021年12月18日deia (バスク地方ビスカヤ県の新聞)電子版ロティーナ・インタビュー
調べてみるとバスクメディアの電子版の記事はふたつに分かれていて、そのうちのひとつ、下のリンクの記事の一部で日本について語っている。
そのなかから、上述サッカーダイジェストの記事にある、ニホンはとても閉鎖的な国の部分を含め、日本に関する話のなかから自分が個人的に気になった箇所を抜き出して、あれこれ考えた。
(全文を訳すのでなく、自分が気になった部分のみを、一部意訳も交えて記載)。
Miguel Ángel Lotina: “El error en Japón está mal visto”
(出典:deia.eus)
Q:日本に行く前と行った後で、監督として感じたことなどは?
ロティーナ:
日本で自分は大きく変わったよ。日本は入っていくのは難しいある意味で閉じられた(サッカーダイジェストでは、ここを「閉鎖的な」と訳)国だと言える。
伝統的で、外国人はそこまで多くない。観光客としての外国人はいる。けれど、仕事をする外国人となると少ないと言える。そういうこともあり、失業者は少ない。
日本では、外国人は、仕事の能力を認められた場合に、受け入れられるんだ。
(サッカーダイジェストWebではこの一文未記載)
日本での監督としてのメンタリティーもスペインとは異なる。
その点が、ヨーロッパのクラブは日本人との契約が難しくしている。
言葉が違う。そして、日本では容易に友人を作ろうとしない。家族のあり方も異なる。ハグや愛情表現もない。
一方、安全面は凄まじい。
テーブルの上に携帯電話を置いて、翌日戻ってきても、携帯電話はそこに残っているだろう。
Q: 日本サッカーの印象は?
技術的に優れた選手が多い。
しかし、競争力と言うとことで弱いところがある。それを克服しサッカー選手として成長するために、日本の選手はヨーロッパ行きを目指す。中国や中東行きは目指さない。サッカー選手として成長したいという気持ちに日本の選手は取り憑かれている。
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日本サッカーに足りないところは?
日本でミスは、罪、とまでいかないまでも、ミスに対しとても重いものを感じている。例えば、自分は選手たちに1対1のメニューを組んだ。そこで、選手たちは「ミスをしないように」プレーしているようだった。
私は、選手たちに言った「ミスをしなければならない。リスクを避けたプレーを続ければ、ミスは起こらない。けれど、サッカーはミスするスポーツなんだ」
この件に関し、日本の選手には自分の真意が伝わりきっていないところがある。これは1日で解決できる問題ではない。
セレッソ時代、2部リーグ(J2)でプレーしていた選手を獲得した。とても良いドリブル能力を持った選手だった。6ヶ月後、彼は代表に選ばれた。
セレッソの名前が出ましたが、あなたは日本で3チーム率いましたね。どんな感じでした?
初めの2年はヴェルディを率いた。日本で最も長い歴史を持つサッカークラブで、スポンサーからの資金力も豊富だった。しかし、あるスポンサーがヴェルディから去ってしまった。
次に私は、日本の一部リーグ(J1)を率いたいと思った。そしてセレッソ大阪を率いることになった。セレッソはスペインでいうとセビージャやバレンシアという感じだろうか。セレッソでの2年はうまく行った。だが、セレッソの上層部が代わり、私への契約更新オファーは出なかった。
そこへ清水エスパルスがオファーを出してきた。清水は、素晴らしいスポンサーがいながら下位に低迷していた。
監督業に戻るのですか?それとも、引退ですか?
私の妻によると・・・引退するためにスペインに戻ったという見方だが、私の考えでは・・・。今は休息が必要だ。私はそれを欲していた。雑談をしたり、散歩したり。まずは休み、そのあと、自分の頭に何が浮かぶか見てみようと思う。
その際、健康、監督業に対する情熱、そして興味深いオファーの3点が揃っていることも必要になる。
ロティーナ、あなたは監督として何度”ハラキリ”をされましたか?
何度もされたよ。自分はこれまで多くの責任を背負ってきた。例えば、ビジャレアルを降格させたと批判されている。けれど、同年、私の前に二人監督がいたことは誰も覚えていない。私はシーズン途中にチームを引き継ぎ、後半6ヶ月指揮官であったことで、降格の責任を私がかぶせられた形だ。
備考:
上述のハラキリ以外にも、「あなたはサッカーでカミカゼに遭遇しましたか」とか、「サッカー界にヤクザはいると思いますか?」などの謎質問もあり、質問の意図が色々な意味で自分にとって謎だったので割愛。
筆者感想:
日本は外国人が入っていくのは難しい、というのは外から日本を見れば、その通りだろう。
ヨーロッパではEU圏内の国籍の人はEU圏内の別の国でも仕事を探すことができる。また言葉も似ていることも多いし(例えばスペイン語とポルトガル語はけっこう似ている)、カタコトでも英語を話す人の割合は日本よりは多いだろうから、共通言語として英語を使ったりでき、別の国の人同士で仕事をする障壁も下がる。
日本では日本語が話せないと仕事をできないと言っても過言ではない。
(ただ、それは必ずしも悪いことでないと思う。日本語のみで多くの経済活動を完結できるというのは強さでもある。しかし、日本の人口が減っていることから、今後多くの日本企業が海外マーケットを見ないと生き残れない時代になり、その場合日本人の外国語能力が生存のための必要性から上がると考える)
言葉だけを考えても、外国人にとって日本で働くのは容易ではないし、日本人からみても外国人を雇う際には言葉の面で難しさがある。
そういうこともあり、ヨーロッパと比べれば、日本で働く外国人の割合は少ないというのが実情だろう。
冒頭でも書いたように、「閉鎖的」という表現を使うと日本人にとって重く、少し非難の意味が込められた言葉と響いてしまうと思うが、個人的にロティーナには日本を非難する意図はなく、日本には外国人が入り込みづらい、信頼を得ると外国人は日本に受け入れられるという実情を淡々と述べたニュアンスと推測している。
人間関係で言うと、日本では、はじめて会う人と話す場合、一定の節度を保った方が良いということが多い。あまり打ち解けすぎると変な人になってしまう場合もある。
一方、スペインの場合、初対面から笑顔で感じよく接する。また、女性と挨拶をする場合、ほっぺにキスをする風習もあるし、ハグもある。その辺りは文化の違いだろう。
これはあくまで個人的な考えだけれど、日本人の場合、相手がどういう人かわかるまで、トラブルを避けるための手段として、一定の距離を保つ。そして、相手が信頼できる人だと分かったら心を開く。
一方、欧米の人たちは、笑顔で感じよくすることで、相手に悪い印象を与えないようにし、それで人間的なトラブルをまずは回避するという考え方があるように個人的に考える。
ロティーナは冗談が好きらしい
ちなみに、上述のdeiaのもう一つの記事は主にスペインについて語られているが、同メディアにてのもう一つのロティーナのインタビュー記事のタイトルが興味深いので記載する。
(出典:deia.eus)
Miguel Ángel Lotina: “Sí tengo la cara seria, pero me gusta la broma continua”
ロティーナ「私はシリアスな顔をしている。しかし、実際は冗談が好きだ」
上記リンク記事内で、ロティーナはこういうことを語っている。
ロティーナ:
「皆が考えるように、私はシリアスな顔をしている。私は、自分の顔をテレビで見るのが好きではない。けれど、実際のところは私はバスク人のユーモアのセンスをもっていて、あれこれ冗談をいうのが好きなんだ」

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