ワールドカップ出場の元ウルグアイ代表と引き合わされテンパった

ウルグアイ

モンテビデオのレストランでの昼食

2012年10月。

仕事でウルグアイを訪問し、取引先の人たちとお洒落地区に位置するレストランで昼食を取ることになった。

ウルグアイの人たちは、おしゃべりが好きだ。

少なくとも、自分が日本からウルグアイを訪問する際の昼食や夕食など(先方にとっては自分を接待しているという状況で)ウルグアイ人のたちは、毎日顔を合わせ色々な話をし尽くしているあろう仲間たちと、何気ない日常のことを楽しそうに長時間話しながら食事を取る。

自分は日本人的に「もうそろそろ昼食を終え、仕事に戻るタイミングかな」と思ったりもするのだけれど、ウルグアイの人たちは延々と話を続け、食後のデザートまでしっかりととる。
(もちろん、それは、日本人である自分がはるばるウルグアイまでやってきた際の接待としての昼食だからであって、普段は簡単に昼食を取っているようだけれど)

自分は、ウルグアイ名物のガッツリとした牛肉ステーキを食べ終えお腹いっぱいになっていた。

デザートを食べる気分ではなかったけれど、取引先の人たちが何度も食べるように促してくるのを、無下に断るのも悪いと思い、その店のデザートの中でも軽量級と思われたドゥルセ・デ・レッチェ味のアイスクリームを注文した。
(他のデザートは、日本人の食後のデザートのイメージを超えたサイズのパンケーキなど、重量級だった)

店員が全員のデザートの注文を取り終えると、取引先の人たちが自分に、自分たちが食事をとっていたのとは別のフロアに行くように促した。

そのレストランで働く年齢が高めの紳士(オーナーかもしれない)も自分たちのテーブルに来て「こちらに来てください」と言った。

別に自分の誕生日でも、何かの記念日でもない。
なんでこんなもったいぶったことをされるのかと怪訝に思いながら、自分は紳士のあとについて別のフロアに歩いて行った。

2010年大会に出ていた元ウルグアイ代表セバスティアン・アブレウ

連れて行かれた先で、元ウルグアイ代表のロコ・アブレウが知人と食事をとっていた。

スペイン語でクレイジーを意味する『ロコ』をニックネームにもつセバスティアン・アブレウは、ウルグアイ代表としてワールドカップ2回、コパアメリカ3回出場など多くの代表キャップ数を持つとともに、世界で一番多くのプロクラブを渡り歩いたことでギネス認定もされている選手だった。

彼の特徴の一つは、ふわっとした浮き球でPKを決めるパネンカで、2010年の南アフリカワールドカップの準々決勝のガーナ戦でのPK戦では、最後のキッカーとしてパネンカを決める度胸を見せウルグアイ中を熱狂させた。
(この試合では、ルイス・スアレスが退場覚悟のハンドでガーナのゴール直前での決定機を阻止し、与えられたPKをガーナがミスした結果もつれこんだ延長でも決着つかずPK戦となった)

ロコ・アブレウのガーナ戦PK

連れて行かれた先に、ワールドカップ出場歴があるウルグアイ代表の伝説的な選手がいた。

そして、自分は取引先やレストランの人から「彼と話をしたらどうですか?」と突然言われた。

自分は戸惑った。
何を話していいか、わからなかった。


サッカー選手と親しく話をすることを夢想したことはあるけれど

告白すると、サッカー選手と親しく話をする自分の姿を夢想したことはある。

自分が応援している清水エスパルスの主力選手に「明日の試合で、絶対ゴールを決めてよ」とか「怪我の調子はどう?」と言ってみたり、アルゼンチンやウルグアイ代表選手と友達になりマテ茶をまわし飲みしながら雑談する自分の姿を妄想したことが何度かある。

しかし、実際に目の前に有名サッカー選手が現れると、気恥ずかしくなって、何を話せば良いかわからなくなるものだ。

少なくとも、自分は目の前のセバスティアン・アブレウに「やあ、セバスティアン。一緒に写真を撮ってくれよ」とか馴れ馴れしいことは言えなかった。

マラカナンでアブレウが決勝点を取った試合を見たことを思い出した

2010年4月18日仕事でブラジルのリオデジャネイロに入っていた自分は、マラカナンスタジアムで開催されていたタッサ・リオ(リオデジャネイロ州ナンバーワンクラブを決めるトーナメント)決勝のフラメンゴ対ボタフォゴを見に行った。

フラメンゴには元ブラジル代表皇帝アドリアーノと、合宿所に女性を連れ込んだことからLOVEの愛称を授かったヴァギネル・ラブの色々な意味で強力なツートップを擁していた。

一方、ボタフォゴには、当時ボタフォゴでカリスマ的人気を誇っていたロコ・アブレウが在籍していた。

強力なライバル関係を持つフラメンゴとボタフォゴの対決で、試合を決める決勝点となるPKをパネンカで決めたのが目の前にいる、当時ボタフォゴ所属のロコ・アブレウだったことを思い出した。

そこで自分はアブレウに言った。「2010年のタッサ・リオ決勝で、あなたがフラメンゴ相手にPKを決めたのを、自分はマラカナンで見たんです」

アブレウからすれば、知人と食事をしていたところに、いきなり知らない日本人が目の前に来た状況だ。食事を邪魔されて迷惑だっただろう。

また、日本人があなたのゴールを見たと言ったって「だから何なんだ?」という気持ちだったかもしれない。
けれど、アブレウは感じの良い笑顔を見せてくれた。

その後、ほんの少しアブレウと雑談をしたが、何を話したかはっきりと覚えていない。
そして最後に、周りに促されて自分はロコ・アブレウと一緒に写真を撮ってもらった。

この経験を経ても、時折、有名サッカー選手と知り合いになり、親しげに話をする自分を想像することが時々ある。

けれど、この経験から、実際に有名サッカー選手を目の前にしても、何を話して良いかわからなくなる自分が想像できる。

だから、仮にプライベートでサッカー選手を見かけても、その選手に声をかけたりして、選手の日常生活の邪魔をしない方が自分の性格上無難なんだと思う。

けれど、中南米の選手は結構フランクだったりするから、いつかまた機会があったら、選手の迷惑にならなそうであれば、勇気を振り絞って一緒に写真くらいはとってもらえる自分でありたい、とも思う。

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