はじめてバルサの試合を見れるというワクワク感が、バルセロナ警察による取り調べで一気に吹っ飛んだ

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バルセロナで、人生初の警察の取り調べを受けた

前回からの続き(バルセロナで警察の取り調べを受ける経緯は下記の記事を参照)

バルサを見るため、はじめて訪れた憧れのバルセロナで、到着直後に警察を呼ばれた話
はじめて訪れた憧れのバルセロナで警察を呼ばれテンパったエピソード

ほんとうに警察が来たのを見て、全身に寒気が走った。
インターネットカフェ受付スペースに、警察が数人並んでいるのを見て、「嘘だろ?」と心のなかで思った。

それまでの人生で、警察に取り調べを受けたことなんてなかった(それ以降、ふたたび警察に取り調べを受けたこともない)。
アメリカのテキサス州エルパソ市に語学留学していたとき、国境の橋を渡った隣町で、「世界で最も危険な街ランキング」の上位常連だったメキシコのフアレス市にたびたび足を運んでも、嫌な思いをしたことはなかった(メキシコ人の友人が同行していたのが大きかったとは思うが)。

そんな自分だったが、はじめて訪れたスペインで、警察官に囲まれるという経験をし、かつてなくテンパった。

バルサの試合を生で見ることを目指してバルセロナにやって来ただけなのに、変な人間の嘘と言いがかりのせいで、自分は外国の刑務所や拘置所にぶち込まれるのだろうか、と瞬時にあれこれ悪い想像をしゾッとした。

当時の自分は20代前半の大学生で、人生経験も浅かった。
スペイン語は基本的な意思疎通はできたとはいえ、警察に自らの潔白を自信をもって証明できるほどの語彙力があるか不安だった。

一方、目の前では、5,000ペセタ札を盗んだと自分に言いがかりをつけてきた女性が、警察にあれこれ話をしている。

その姿を見て、自分はイラついた。
なんでこんなヤツのせいで、自分は嫌な思いをしないといけないんだ、と思った。

警察が自分に話しかけた。「身分証明書を見せなさい」

「その前にすいません」と自分。「念のため質問しますが、あなたは本物の警官ですか?ニセ警察ではないですよね?」

「何を言っているんだ。本物の警官だ」そう言って彼らは警察の身分を示す手帳というかカードのようなものを見せた。「君の身分証明書を見せるんだ」

当時の旅行ガイドブックなどには、日本人はスリや強盗に狙われやすく、パスポートをバッグなどと一緒に奪われる可能性がある。パスポートを持ち歩くと紛失すると大問題だから、パスポート原本でなくコピーを持ち歩くことを推奨する記載もあった。ただ、自分はそのとき、たまたまパスポート原本を持っていたので、パスポート原本を警察に提示した。

警察官は自分のパスポートの情報をメモしている。
無実の罪で身分証情報が他人に見られていることに嫌な思いがした。

そして、自分は警察に言った。「あなた方にお願いする、唯一のことは、真実を追求して欲しい、ということです。あなたは、この女性たちとグルじゃないですよね?」

「もちろんちがう」と警察は首を横に振った。

「そうであると信じます」と自分。「事実としてあるのは、自分は誰からも何も盗んでいないということです。他の人の持ち物に、触ってすらいません。それが事実で、自分は無実です。受付に監視カメラがあるんですよね?監視カメラを確認してください。それを確認すれば、自分が無実だということが確認できます!

警察官はインターネットカフェの受付とこそこそ話したあとに言った。「監視カメラに、録画機能はない」

「ええ?」と自分は警官に言った。「では、どうするんですか?証拠がないのに、この嘘つき女の言うことをあなた方は信じるんですか?自分はバルサの試合を見にバルセロナに来た日本人観光客にすぎないんですよ。そんな自分が、スペインに来て、泥棒の容疑をかけられているなんて、信じられない」

自分のことをハメようとした詐欺師女性たちは、別の警官と話をしながらこちらを見てニヤニヤしている。それを見て、自分は異様に腹が立った。

自分に取り調べをしている警官に言った。「監視カメラに録画機能が無いなんて、バカげてる。こんな人間の電話を受け、すぐにここに駆けつけるなんて奇妙ですね。あなたはやはりこの女性とグルなんでしょ?さっきも言ったように、自分の望む唯一のことは、真実を見てくださいということだけです」

トイレに入るように促された

「落ち着きなさい」と警官は言った。

そして、自分に言いがかりをつけた女性の前で、自分は警官に体をチェックされ、バッグの中も明けるように言われた。自分はそれに従った。

自分をハメた女性は、相変わらずニヤニヤしている。
自分はそれを見て警察に言った。「俺がされているのと同じことを、その女性にもしてくださいよ。フェアじゃないでしょ」

そして、警察は自分に言った。「さらに詳しく話をしたいから、ここに入りなさい」

入れと言われた先は、男性用トイレだった。なんでこんな目に逢わないといけないんだと思ったが、相手は警官だし、最終的には従うしかなかった。

トイレに入るなり、警官は自分の肩に手を置き言った。「日本人の若者よ。いいかい。ここはスペインなんだ。観光客に悪さをしようとする奴はたくさいんいるんだ」

「えっ?」警察官の言葉に自分は驚いた。

「たとえば、このバッグ」警官は自分が身に着けていたバッグパックを指さした。「スペインにいる間は、前にかけなさい。後ろに背負うと、スリに中身を抜き取られる可能性がある」

警察官は、仕事の手順として、通報を受けたら、その場に駆け付け、一連の取り調べをしないといけなかったことを自分は理解した。そして、自分が難癖をつけられたことを警察は理解し、そして自分にアドバイスまでくれたことで少し気持ちが落ち着いた。

そんな自分は、「アドバイスを頂き、ありがとうございます」と言った。

トイレから出ると、自分に難癖をつけた女性は「この日本人からはカネを巻き上げられなかった」とでも言いたそうな苦笑いを浮かべた。

それを見て自分はイラっとした。そして警官に言った。「この女性の身分証の情報は控えないんですか?絶対に、また同じことをやりますよ」

だが、警察は首を横に振り、自分に言った。「もう行っていいぞ」

かくして自分は、インターネットカフェの外に出た。



警察の取り調べを乗り越え、自由の身になったという安堵感と、一方で、悪い人間のせいで嫌な思いをしたというイライラなどが入りまじり疲れがどっと出た。

そんな自分はインターネットカフェからカタルーニャ広場を背にしながらPasseig de Gracia通りへ入り、一番はじめに見つけたベンチに深くこしかけた。バッグパックを前で抱え込むように休憩をしていると、さっきの警官が前を通り「気を付けるんだぞ」と自分に言った。

警察の心づかいに感謝の念もあったが、外国人観光客からカネを巻き上げようとした女性二人組の身分証確認などを行わなかった警察への対応に腹が立つ気持ちは消えなかった。

バルセロナへの憧れが強かった分、嫌な思いをしたことがバルセロナに対する失望感のようなものにつながり、バルサの試合を見る気分も失せてしまった。

そして、日本に帰りたいと思った。

<<続く(下の記事へ)>>

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日本人経営のゲストハウスで知り合った、日本からスペインに留学に来ていた女子大生たちがバルセロナで強盗に遭った話。
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