キングカズの話題でタクシー代をまけてもらった話

ブラジル

DAZN

サンパウロのタクシー運転手

お金が足りない。焦りで背筋が寒くなった。その瞬間、ふいに、バックミラーにかかっているサントスFCのエンブレム付きアクセサリーが目に飛び込んできた。これで状況を打開しよう。

日本人だからボラれているのかもしれない

2010年4月21日、ブラジルのサンパウロ中心部からグアルーリョス国際空港へ向かうため、タクシーに乗った。サンパウロの渋滞のひどさは南米で有名だが、その日は祝日ということもあり交通量は少なく車は順調に進んでいった。

そろそろ空港が近いと思い、ふとタクシーの料金メーターに目をやった。するとそこには100レアル(約6,000円/当時のレートで1レアル約60円)という数字が表示されていた。

メーターの進みが早い。そう感じた。それまでの経験上、サンパウロ中心部から空港は渋滞がない場合、100レアル以内が多かったのに、そのタクシーのメーターは空港までまだ少し距離がある時点で既に100レアル近くを表示している。

もっとも、メチャクチャボラれているというほどではないし、気のせいかもしれない。それでも、自分が日本人ということで、ブラジルのタクシー運転手から、プチぼったくり、というレベルで少しぼったくられているのかもしれない、という心配があった。

目くじらを立ててクレームを言うほどの高値がつくとも思えなかったけれど、悪いことに、そのタクシーはクレジットカード使用不可で、自分の財布に残っていた現金は100レアルだけだった。

お金が足りない。焦りで背筋が寒くなった。その瞬間、ふいに、バックミラーにかかっているサントスFCのエンブレム付きアクセサリーが目に飛び込んできた。これで状況を打開しよう。

キングカズこと三浦知良の話をサントス好きの運転手にしてみた

そう思った自分は、50歳くらいの男性タクシー運転手に質問した。「サントスが好きなんですか?」

運転手はこぼれそうな笑顔を浮かべた。「そのとおりさ。サントスは世界で一番美しい存在だよ。君はサントスを知ってるのかい?」

「はい。日本サッカー界の伝説、カズこと三浦知良がプレーしていたクラブとして、サントスは日本で有名なんです」

「おおー!」運転手は雄たけびを上げた。「カズか!懐かしいな!彼は良い選手だった」

運転手は明らかに機嫌を良くしている。さらに自分は、「カズがサントス在籍時にパルメイラス相手にゴールを決めたことを知っている」と言ってみた。すると、運転手は体を揺すらせ興奮状態になった。

さらに、学生時代にブラジルのサッカークラブの応援歌集的なCDを所持していた自分は、サントスFCの公式ソングを知っていて、その一節を歌ってみせた(下の動画はその応援歌)。

Agora quem dá bola é o Santos.
O Santos é o novo campeão.
Glorioso alvinegro praiano, Campeão absoluto desse ano!
Santos!!!
Santos sempre Santos….



運転手は、サントスの応援歌を知っている日本人に驚き、いたく感動している様子だった。

そうこうしているうちに、タクシーはサンパウロの国際空港に到着した。料金メーターは130レアル(7,800円)を指している。カズとサントスの話で運転手の心のガードはすっかり緩くなっていた。それを利用して、自分は値下げをお願いしようとした。

するとその瞬間、運転手が口を開いた。「今日は祝日だから割増料金がかかるんだ。だから、メーターも早く進んだのさ。けど、君はカズの同胞でサントスを好きだ。だから、料金は100レアル(6,000円)で良いよ」

運転手の言った休日割増料金が本当かその場ではわからなかった。さらなる値下げを要求しようとも思った。だが、自分は手を打つことにした「30レアル(1,800円)も引いてくれてありがとうございます」そう言って運転手に100レアルを渡した。

「君の素晴らしい旅と、カズの幸運を願ってるよ」そう言うと運転手は穏やかな笑顔を浮かべ、親指を立て、走り去っていった。

こうして、カズのおかげでスムーズにタクシー代を30レアル安くしてもらうことができた。カズの話をした時の、運転手の感動の声は今でも心の中に残っている。

ちなみに、その後、実際に休日料金が存在することがわかった。タクシーメーターは正常に稼働し、運転手は日本人からぼったくる気持ちなんてなかったということだ。運転手のことを疑ってしまい、申し訳ないと思っている。

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