2026年10月8日

「高すぎるサッカー」で進む“ファン離れ”…身近な下部リーグが取り戻すサッカー熱

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ノンリーグ熱狂、ファン離れに挑む

サッカーの「高額化」で離れたファンが、身近な下部リーグでサッカー熱を取り戻す

イングランドで、プレミアリーグをはじめとするトップレベルのサッカーから距離を置いたファンが、地域密着型の“ノンリーグ”を通じて、再びサッカーへの情熱を取り戻しているようだ。イギリスメディア『BBC』が、10月7日にその背景を特集している。

 

その象徴的な存在となっているのが、ナショナルリーグ・サウス(イングランド6部相当)に所属するドーキング・ワンダラーズだ。

 

同クラブの創設者であり、オーナー、さらに監督まで務めるマーク・ホワイト氏は、イングランド下部リーグでは広く知られた存在。試合中の激しい言動や率直な発言でも注目を集めており、クラブの舞台裏を追ったYouTubeドキュメンタリー『Dorking Uncovered』の人気も、その知名度を大きく押し上げた。

 

ドーキング・ワンダラーズは26年前、ホワイト氏と友人たちによって設立された。当初は仲間同士でピッチ代を出し合ってプレーするチームだったが、その後は驚異的なスピードでカテゴリーを駆け上がり、これまでに12度の昇格を経験。2024年にナショナルリーグから降格したのが、クラブ史上唯一の降格となっている。

 

現在52歳のホワイト氏は、イングランドの上位6カテゴリーでは最長在任の監督でもある。YouTubeを通じて世界中から注目される現在について、「2025年には5億回もの視聴があった」と明かしている。

 

◼️地元クラブを「知らない」人々◼️

 

こうしたノンリーグ人気の拡大を支えているのが、SNSの存在だ。

 

かつて地域のサッカークラブを取り上げてきた地方紙が、人員や予算の縮小によって十分な報道を行えなくなった一方、各クラブはYouTubeやTikTok、Instagramなどを利用して自ら情報を発信。ゴール映像や選手インタビュー、クラブ内部に迫るドキュメンタリーなどを通じて、新たなファンとの接点を作っている。

 

実際、ドーキングが所属するリーグの2024-25シーズン平均観客数は1221人。

これは10年前と比較して134パーセントの増加だという。

ホワイト氏は、「自分の地元にどんなクラブがあるのか、人々が驚くほど知らないことを過小評価している」と指摘する。

 

テレビでプレミアリーグを見ていても、家の近くにどんなクラブが存在するのか知らない人は少なくない。その一方、地元クラブなら交通費は安く、スタジアムで販売されるビールも比較的安価で、知り合いと顔を合わせる機会も多い。

 

SNSは、そうした「地域にクラブは存在するが、人々がその存在を知らない」という距離を埋める役割を果たしているという。

 

◼️ 高騰するプレミア観戦費用も背景に◼️

 

ホワイト氏自身、ドーキング・ワンダラーズを立ち上げた理由の一つは、友人たちとプレミアリーグを観戦するために高額な費用を払い続けることに嫌気が差したことだった。

 

現在もプレミアリーグのチケット価格やテレビ・配信サービスの料金は、ファンにとって大きな負担となっている。

 

そうした中、「もっと安く、もっと身近に、そしてもっと人とのつながりを感じながらサッカーを楽しみたい」というファンがノンリーグへ向かっている。

 

クラブとサポーター、選手と観客の距離が近いことも大きな特徴だ。テレビを通して世界最高峰の選手を見るのとは異なる、“自分たちの街のクラブ”を応援する楽しさが再評価されている。

 

◼️レクサムが示した新たな可能性◼️

 

ノンリーグへの関心を世界規模で高めた存在として外せないのが、ウェールズのレクサムだ。

 

俳優のライアン・レイノルズ氏とロブ・マケルヘニー氏がクラブを買収すると、その過程をドキュメンタリーとして発信。クラブはノンリーグから昇格を重ね、チャンピオンシップまで到達した。

 

その成功は、「著名人」「SNS」「地域クラブ」を組み合わせた新たなクラブ経営の可能性を示すものとなった。

 

さらに2026年には、世界的なYouTuberのKSIがダゲナム&レッドブリッジの株式を取得。将来的なプレミアリーグ昇格への意欲まで公言している。

 

ホワイト氏もこうした動きを歓迎。「有名人以上に効果的なのは、SNSで影響力を持つ有名人」と語り、KSIの参入はダゲナムだけでなく、リーグ全体への注目を高める可能性があると指摘した。

 

◼️「サッカーを嫌いになった人たち」が戻ってくる◼️

 

ドーキング・ワンダラーズが次に目指すのは、EFL(イングリッシュ・フットボールリーグ)への昇格だ。現在のカテゴリーからは、あと2度の昇格が必要となる。

 

ホワイト氏は、仲間たちと作ったクラブがもしEFLまでたどり着けば、「世界でも最も知られるスポーツの成功物語の一つになる」と自信を見せる。

 

もっとも、彼がノンリーグの価値として最も重要視しているのは、昇格や成功だけではない。

 

ドーキングのコンテンツを特に支持しているのは、かつてサッカーをプレーしていた人、日曜リーグ(サンデーリーグ)を経験した人、以前はクラブを応援していたものの、いつしかサッカーから離れてしまった人たちだという。

 

ホワイト氏は、「サッカーを好きではなくなった人、プレミアリーグやテレビ中心のスポーツに幻滅した人たちこそ、僕たちを一番好きになってくれる」と語る。

チケット価格の高騰、増え続けるテレビ・配信サービス、巨大化するビジネス――。トップレベルのサッカーが世界規模のエンターテインメントへと発展する一方で、“身近なサッカー”を求めるファンも増えている。

 

SNSをきっかけに地元クラブを知り、スタジアムへ足を運び、選手やサポーターと同じ空間を共有する。

 

ノンリーグは今、サッカーから一度離れてしまった人々にとって、「もう一度サッカーを好きになる場所」になりつつある。

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